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「水の生態系エコシステム」

                   
 

公益社団法人 商業施設技術団体連合会発行の「商業施設」2016年4月号に弊社代表の尾崎 初の取材記事が掲載されています。  
その抜粋を紹介いたします。  

                                                                                         

〜水槽の中の「小さな世界」〜    
 水の生態系エコシステム


作品「青い光」 



都会で発見した「小さな世界」  

 

 数年前から進められているJR有楽町駅周辺の再開発によって、駅の乗降客を中心として、 丸の内のオフィス街や銀座方面の商業集積へと、かつてはなかった人の流れが生まれている。 当然のことながら、駅前にも大型の商業施設が集積し、平日・休日を問わず賑わいを見せて いる。ある日、駅前広場の喧騒を避けるため、地下通路からとある施設へとアプローチしたとき、 エントランス脇に設置された水槽(アクアリウム)のディスプレイが目に留まった。小さな水槽の中で水草がしなやかに揺らめき、鮮やかな緑の葉陰で小さな生き物たちが優雅に戯れていた。都会とは無縁の「小さな世界」の自然の営みは、殺伐とした街や人の心に潤いを与えてくれる、と実感したひと時であった。


水槽で魚を飼うことの難しさ
 今回ご紹介するペンギンビレッジ株式会社代表の 尾崎氏は、今から30年ほど前、魚を水槽で飼う中で、 水槽の水が汚れ、魚がもたないという状況に悩んでいたということだ。水槽で魚を飼うという歴史は長い  ものの、水の汚れや魚の病気などは付き物で、管理に手間がかかるなどの大きな問題を抱えていた。水槽に水だけを入れた場合、魚がエサを食べフンをすると、フンに含まれるアンモニア(NH3)の毒性のためすぐに魚は死んでしまう。従って、当時は水槽 の中に砂を敷き、砂の中に含まれるバクテリアにアンモニアを分解させ、毒性の弱い硝酸塩(NO3) に変えていたということだ。しなしながら尾崎氏は、水槽の中の硝酸塩の濃度が増すと、魚の皮膚が荒れ食欲不振などの障害が出ることや、死に至ら しめることもあることを、自ら実験を通して検証した。

 ディスカス
   


マーブルハチェット  


酸素の気泡  


水草の浄化能力に着目
 硝酸塩の問題について研究を進める中で、尾崎氏は水草の浄化能力に着目した。水槽の中に水草を入れると、硝酸塩は水草に吸収され、光と二酸化炭素(CO2)を使った光合成によって、水草の生育が促されるという考え方である。光合成によって作られた酸素(O2)は魚やバクテリアに供給され、魚やバクテリアが排出した二酸化炭素は水草に吸収される。従って、水槽の中に水草を入れることによって、魚を頂点とした物質循環が成り立ち、魚とバクテリアと水草が共生する環境が創られるのである。水替えの作業によって排出せざるを得なかった硝酸塩が水草によって吸収されるというしくみは、その後の尾崎氏の、アクアリウムへの考え方を一変させた。  

エコシステム図            




ペンギンビレッジ本店外観  

 「水の生態系エコシステム」の提案
 生命の源といわれるたん白質の分解・生成の過程(チッ素循環)が、小さな水槽の中で自己完結的に行なわれる様は、地球上で繰り広げられてきた生態系の循環の縮図ともいえる。その後、尾崎氏は自身の考え方を「水の生態系エコシステム」(登録商標)として提案し、アクアリウム業界に新風を巻き起こした。また、尾崎氏は水槽の中に配置する水草についても研究を重ねた。(略)

 

 
作業中の尾崎氏    


「小さな世界」に感じる無限性
  アクアリウムの中に創られた生態系は、尾崎氏を始めとする専門家の並々ならぬ研究努力やメンテナンスなどの賜物であることを理解することができた。尾崎氏は自身の仕事について、「生き物たちが生きようとするその手助けをしているに過ぎないが、小さな生態系を創ることによって、新しい世界を創って行きたい。」と控えめに語られた。
 わずか数十センチほどの「小さな世界」。我々がその小さな世界の前で足を止め、思わず見入り、釘づけにされるのには理由がある。ある時は光を求めて「月の砂漠」を彷徨い、またある時には「夜の帷」が下りた街に身を隠す…。我々が水槽の中で生きる魚たちに身を置き換え、心の内を投影することで、人間社会に生きる様々な思いや悩みから解き放たれるからではなかろうか。                                        

アクアリウムは、「小さな世界」が創り出す無限の世界である。 (略)                                                   (編集委員 渡邊あゆみ) 


 


作品「月の砂漠」


「商業施設」2016.4月号