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5、「世界水草レイアウトコンテスト2013 審査員レポート」

                   ペンギンビレッジ株式会社 代表 尾崎 初(はじめ)



「第二部 ネイチャーアクアリウムパーティ篇」

G  ネイチャーアクアリウム パーティ

 第二部は17時から、同じ国際フォーラムのレストランを使ってのパーティとなりました。

 まず主催者として天野さんの挨拶。

 アクアリウムの役目は、これまでの癒しやリラクゼーションといったことから、広く環境というテーマに発展すべきという趣旨を訴えました。

 これには私も大賛成です。癒しやリラクゼーションといったいわば個人的なテーマは、アクアリウムの発展のもともとの動機ですが、それを越えて広く社会的・世界的な地平に向かってアクアリウムは提言できる。生態系という発想は、まさにそういった世界の環境問題や文化性を象徴的に表せる身近な体験ツールとなるのではと思います。

 


パーティ冒頭、天野さんの挨拶


 続いて乾杯の発声が私に依頼されました。

乾杯の挨拶の尾崎
 

 第一部は世界規模のレイアウトコンテストとして、これは妥協なく、真剣に、集中して、その技術や美しさや、また表現される世界や思想までが厳しく吟味されました。

 第二部は打って変わってパーティです。褒められた人も、けなされた人も、またアクアリウムの表現に迷っている人も、一緒に日常を忘れて楽しみましょうと声をかけました。特に一部でけなされたアクアテイクEの武江さんやアン・アクアリウムの志藤さん、さらにかつて上位入賞の常連だった小野さんの名前まで上げさせてもらって、アクアリウムに集う同志、友人として同席できる楽しさを訴えました。

 

 こうして夕方6時半くらいまで、プレゼント抽選会等を通した歓談が続きました。特に天野さんにはひっきりなしのサインや記念写真の申し出が続いて、テーブルの食事にも手がつかないほど。私も1年ぶりにお会いする出席者の方々、雑誌や業界関係の方々、外国の方々とこの間のご無沙汰をあたため、楽しいひとときを過ごさせていただきました。


 

かつての?上位常連の小野さん

 

ベテランShopネギシの山岸社長と


アクアライフ誌の山口編集長


 


すみだ水族館賞の築地さん


台湾からの審査員、黄(ファン)さん(左から2人目)


 


金賞(2位)の深田さんには個人的に批評の依頼を受けました。

 







H  パーティの終了

  6時半、いよいよパーティがお開きに近づきました。
 締めの挨拶は京都の山崎先生。日本には剣道、柔道、茶道とさまざまに「道」のつく世界がある。アクアリウムも一種の「道」として、人々の寄り添いあう共通の世界として広まっているが、道はまた長く続くものとして道になるのだから、ぜひ来年も研鑽を重ねてお会いしたいと、締めの言葉にふさわしい挨拶が行なわれました。

 


山崎先生の締めの挨拶

 

 

 山崎先生の背後に山田先生、天野さん、私も加わって、山崎先生の合図で、会場の方々、そして世界へ同時発信中の世界のアクアリウムファン全員とともに、再会を約して右腕を突き上げ、激励の声を掛合いました。


エイエイオーッの掛け声

 


4人の握手に弊社写真係の小松が飛入り参加

 
 最後は恒例の合唱です。「上を向いて歩こう」をステージに上がった20人くらいのADA社員のダンスに合わせて大きな声で歌いあい、終幕となりました。

 

 第二部はこうして終了しましたが、ADA特約店はこの後、別会場で天野さんを講師としたセミナーを開催しました。

 さらに外国から参加の約60人を対象に、都内及び新潟のADA本社で、数日間のセミナーが開かれたようです。天野さん、及びADA社員の方々にはハードスケジュールのネイチャーアクアリウムの日程でした。ご苦労様でした。


会場出口で、先生方に囲まれてやや緊張気味の弊社水草担当の柘植(中央)



外国から参加の50名を越える方々がペンギンビレッジ本店を見学。


 




 








 
I  受け持った作品解説の概要

   (作品についてはADAのHP、または『世界水草レイアウトコンテスト2013』作品集をご覧ください)

 

世界ランキング26位  タイトル「上弦庭」

とても丁寧に作られていて、穏やかで、破たんなく円満…。

腕のよい職人が作ったコケか芝の日本庭園をそのまま水に沈めたような趣。

さらにじっと見つめると、中央の道を通って心が奥へ奥へと引き込まれるような精神的な深みも感じられる。それだけ人の心になじむ丸みと奥行きが表現されている。

ただ精神的な方向で眺めると、よく作りこまれている左1/4の造形がややくどいか、という印象がある。

これは作品を完璧な造形美とするか、精神的な作風とするかの分かれ道かもしれない。

造形美とするなら、左1/4の造形こそが全体を締めるポイントとなるが、精神的な作風とするには、ここをぐっとシンプルにするか、または別の水草でアレンジすると、また違った効果が現れる気がする。






 

世界ランキング18位 タイトル「風の渓谷」

これはこの数年来のコンテストでもっとも感銘を受けた作品です。

淋しい谷に強烈に風が渡っている。淋しく風を防ぐものがないから、風が強いのか。風が強く、草木が育たないから淋しいのか。風はこの場合、強い水の流れでもあるのか、と、この作品はまず見るものに強く訴え、想像力をかきたてる。

そして地衣類を思わせる単調な緑と、茶色く切り立った荒い岩肌だけの谷は、それでも一時の凪の時間か、半透明のいかにも頼りなげな魚の群れを粛々と進ませている。

一見して華やかさのない、荒涼とした水景だが、それ以上に低く抑制の効いた表現スタイルは、この環境にも適応して生きている水草の辛抱強い生態と、それ自体が淋しげな魚の効果的な使い方で、何かを訴え、叫びだしたい意思が封じ込められているように、見る人の心を捉える極めて思索的な作品となっている。

これはきっと地上の風景でもなければ、単なる水中の景観でもないだろう。アクアリウムの表現とは何か、その独自な可能性を示唆してくれる新しいタイプの作品だと思う。






 

世界ランキング11位 タイトル「軽舟すでに過ぐ万重の山」

このタイトルは中国の詩人李白が、左遷を解かれて都へ戻る舟の中で読んだ詩の一節ということです。川を下る舟は、李白の喜びにはやる心と相まって、周囲の雄大な景観を瞬く間に背後へと押しやっていく…というふうに、中国の伝統的な山水図に描かれているような風景がパノラマとして展開されている。

その細かく計算され、おそらく無数に手を入れている努力とテクニックは称賛に値するし、実際の風景にも見まがう造形の見事さはみていて楽しいものだ。

ただ中国の有名な風景や山水図に似せようとするがゆえに、どんなにじょうずに作っても、絵が描く風景と同様か、その写しに過ぎないのではないか。

地上の風景を表現するジャンルがあれば別の評価になるだろうが、水景としての表現のコンテストとしては少し分が悪い面がある。こうした試みから得られる技術やセンスを独自な水景創作に活かしてほしい。

 





世界ランキング5位 タイトル「オーロの巡礼」

この作品には3つの点で驚かされました。

1つは一見して、メッカやエルサレムへの巡礼といった絵でも、映画でも見られている荒涼とした谷間の表現が実に的確になされている点。

2つ目は、見るからにダイナミックな造形が、60×45pという比較的小型の水槽で作られている点。ただし、天野さんによると、これはかなりな広角レンズを使って撮影されているので、その分、よけいにダイナミックに見える。そこは少し減点ということです。

3つ目は、この作者が日本人であったという点。まったく異邦の風景にみえるものが、同胞としての日本人の心象風景(イメージ)のひとつであるということに驚きました。

こうした驚きを含んだ見事な作品なのですが、欠点としてはタイトルにも即してあまりに見事に寓意的なので、巡礼に見えすぎてそれ以外に見えない点が欠点ではないかと思う。

たとえば千人の人がこの作品を見た時、千人の人は立場も生い立ちも環境もみんな違う。そうした人々が一様に巡礼にしか見えないことは、テーマ性が成功しているようでいて、実はそうではないのではないか。ダイナミックな造形と堅固なイメージ性で目を引きつけるが、逆に言うと人々の自由な想像を許さない点が欠点と言えば欠点。

たとえば谷の遠方の入口にテトラオーロの乱れた群れが少し見えるが、先頭までのオーロが実に整然として巡礼そのもの。この先頭のいくつかが反転してひるがえるような乱れを見せると、それはかえって人々の想像を引きつけ、そういった意味で“華やぎ”が出るのではないか。

ついでに述べると、この作品のオーロ、そして18位「風の渓谷」の半透明の魚のあり方は、本コンテストでの魚の重要性の一端を示しているような気がする。シャッターチャンスを作る苦労は想像を絶するほどと思うけれど。

                                                                                                      以上

 

 

 


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