Live Window13

追悼 天野尚 -2  リスボン水族館行

                                                                           
ペンギンビレッジ株式会社 代表  尾崎 初(はじめ) 

                   


*写真はスマフォで簡易的に撮ったため、お見苦しいことをお詫びします。
 

ADAの創業者、天野尚さんが亡くなってもう一年半、ADA社が天野さんの遺作となったリスボン水族館の40mネイチャーアクアリウム「水中の森」の見学ツアーを組んでくれた。

 

コの字型に組まれた40m
「水中の森」の一部


A、天野さんとの初対面
 

天野さんとの付き合いは、互いにこの仕事を始めて間もない1984年に遡る。

この年、練馬の問屋さんが水草の勉強会を開いてくれた。産業会館というやや古びた区の施設で、35名くらいのshopの人が集まった。思ったより盛況という主催者の話だったと思う。
この時、講師として招かれたのが京都、ヤマサキ水草園の山崎先生だった。私は先生とすでに1年ほどにわたって電話や手紙でのお付き合いと水草の取引も願っていた上に、この年の1月、京都の先生のお店へ伺っていて、お目にかかるのはこの日が2回目だった。

 

先生の講演が終わると、一番前の席に座っていた人が、演壇に行って先生と話し始めた。

中頃の席にいた私も加わり、初対面以来のご挨拶をさせていただいたが、その時、先生から天野さんを紹介された。

先生は左手を大きく上げて、あっちの方のお店の人です、と方角で北を差す様子でおっしゃった。

練馬の北というと、埼玉県か、または群馬県、と私は解釈したが、実際には天野さんは新潟とおっしゃった。

その後、天野さんとの付き合いでは、いろいろの事で驚ろかされっぱなしだったが、最初の驚きがこの事だった。

関越自動車道も新幹線も通っていない34〜5年前の当時、まさか新潟から水草の講義を聞きに東京まで出てくる人がいるとは思えなかった。

 

でも天野さんの印象はそれだけではない。

 

天野さんはもちろん長身の人で、背が高かった。でも体は細く、まだひげのない頬は削げているほどで精悍。加えて黒い髪を肩まで垂らして、この日、黒いシャツと黒いズボンの天野さんの後ろ姿は、まるで黒い熊が立っているような印象だった。

(あとで聞いたら、このころはまだ競輪の選手もしていたそうだ)。

 

でも天野さんの印象はそれに止まらない。

 

それほど精悍な天野さんの顔を覗き込むと、そこにある目の印象深さが特別だった。
穏やかで控えめ、人懐っこささえ宿した目にある極めてナイーブな光だ。傷つきやすい心がのぞくような繊細な光。精悍な風貌の中にあるこれだけナイーブな光の一種のアンバランスさが、30何年も前のはじめての出会いをよく覚えている理由だ。そしてこのナイーブさが、天野さんの作品と生き方を貫いている本質だと思う。もちろんこの時の天野さんが、のちにあれほど大きな仕事をする人だとは思いもよらなかった。


B、リスボン水族館紀行

天野さんからいただいたリスボンからの絵ハガキ

ADA社員、リスボン水族館職員にヨーロッパボランティア総勢40人を率いて、6日間かけて40mの水草水槽を創り終えたと書かれている。まるで自然の小川のようだ、と。

 


日付は2015年2月3日 


2017年1月30日(月)15時20分羽田発ルフトハンザ航空でフランクフルト経由リスボンへ。B747のジャンボ機。

参加11名+ ADA社員2名の総勢13名。搭乗前に軽く自己紹介をした。

参加人員

北海道 アクアフレンド北水  内野さん

山形県  グッピー園  高橋さん

新潟県  セブンスヘブンス 相馬さん

愛知県 リミックス  小野寺さん

愛知県  アクアリーブ  岸下さん

京都府 アクアショップ ワサビ  神崎さん夫妻

兵庫県  水草工房 フィン  福島さん

長崎県  ディーアクアリウム  細川さん

東京都 ペンギンビレッジ 尾崎+1人

ADA  早川さん、佐藤さん、現地(柴田さん、吉田さん)

みなさんにお会いすると、私と家内は一見してダントツの最年長で、ちょっとショックだった。そうしたこともあるのか、旅行中、みなさんからよくしていただいて、たいへんありがたかった。
私自身は体調は悪くはないが、鼻のアレルギーが寒暖だけで反応するほどひどくなっている。ちょっとでも寒さを感じると鼻が詰まり、まるで高山を歩いているように呼吸不足になって、頭がボーッとなる。マスクと首巻きが欠かせない状態だった。

また、私は他のお店を見ることもほとんどないので、最近の各特約店の様子や運営の問題点など、興味深く教えていただいたとともに、改めて自分たちを見直し、できればこのアクアリウムの世界の共通の問題点に対して力を合わせていければという思いを強く持った。

世界水草レイアウトコンテストやネイチャーアクアリウムパーティをいっそう大事にするとともに、こうした出会いをあらたな機会として、一歩でも前進できればと思う。

ドイツ フランクフルト経由、ポルトガル リスボン現地時間23時着。およそ11時間+3時間のフライト。

リスボン到着後は大型バスでマリオットホテルへ。もう24時になるので、そのまま部屋に入った。

翌1月31日(火) 雨 朝7時半くらいに朝食のバイキング。味はなかなか良かった。

今日の天気はあいにくの雨。雨の少ないリスボンにとっては久しぶりの貴重なお湿りとのこと。


9時頃バスでリスボン水族館へ。

9時半から10時オープンまでの30分間で、40mネイチャーアクアリウム「水中の森」の一般公開していない水槽上面とバックのろ過部分を特別に見せてもらう。 




 水槽上面
 第1コーナーから正面方向
 


     


 正面方向
 清潔に整頓されている。


 第2コーナーから展示スペースがのぞける。
 


 魚が群れ集っている。

 


 地下のろ過部分
 


 天吊りのライト群

 オープンろ過槽のバイオボールなどのロザイ


10時オープンに合わせて展示部分に移動する。その素晴らしさについては別記。

11時半くらいから海水エリアに移動。5000トンの大円形水槽を中心に各水槽の陳列が組まれている。

12時半から付属のレストランで昼食。味は悪くないがメニューは単純。併設の軽食コーナーといった位置づけのよう。

続いて海水部分の上面とろ過部分を、淡水と同様、特別に見学。15時くらいまで。最後は館長ジョアン・ファルカートさんと挨拶、記念撮影。



 5000トンの巨大海水水槽の上部
 エレベーターで昇る。


 水槽の天井
 


マンボウやペンギン。水槽が巧みに仕切られ、
 


世界中の海の生きものが見られる。
 


 巨大な地下空間。ろ過槽をはじめさまざまな機器が運転中。
 相当な音量。
 


  「レッドシー」の海水塩
  海は近くだが、水質上問題があるので、海水はすべて
  人工海水。


 水族館レストラン  お昼の定食

 




館長さんの話では、40m水槽についてはヨーロッパ各国から業者見学があり、評判はよいが、このパターンが普及するかは自信がない様子だった。

 

その理由としてコストの問題があげられた。

そのコストの中身について聞いたつもりだったが、明確な返答にはならなかった。果たして海水等の部分に比べてそんなにコストがかかるものだろうか?

あるいはネイチャーアクアリウムに対する理解や普及度の問題かもしれない、という気がした。

 

以降、雨もあって予定の変更。

明日の予定だったジェロニモス修道院へ。

有名な中庭を見て、ここを舞台にした映画を見たことがあるのを思い出す。とても印象的な場面だったが、なんの映画か思い出せない。日本人ガイドの堀さんに聞いたが、たくさん映画が撮られているから、という話。

 

それからベレンの塔、発見のモニュメントへ。
 

  
ファルカート館長、及び女性の管理責任者と

 


ジェロニモス


修道院

 発見のモニュメント


夕食はライトアップされた高台の古城を望む一等地のレストラン。名物のタラ料理は味がシンプルだが美味しい。日本人の口に合うし、ボリュームは多すぎるほど。

 

またパンはポルトガル、スペインを通して毎回の食事で1回の外れなく、大変おいしい。バターやジャムもでるが、なにもいらないおいしさだった。

お酒はビールにスパークリングワイン、みなさんくつろいで話が弾んだ。
 


 夕食のタラ料理

 


ツアー最初のディナー。
奥から、ADAの早川さん、柴田さん、内野さん、高橋さん。

出発以来、はじめて全員が落ち着いて顔を合せる最初の機会となって、冒頭、ADAの早川さんの挨拶があった。

特に印象的だったのは、「天野の遺作をわざわざみなさんがここまで見に来てくれたことがうれしい…」という一節だった。

私たちとしては、最少催行人数を割ってまでADA社が企画を実行してくれたことが嬉しかったし、同時に、どこかでわたしたちのために無理をさせたのではないかという申し訳ない気持ちも持っていた。

そんなちょっとした気がかりが、この一言で払拭されたし、かえってそれ以上に、早川さんのことばそのままに、わたしたちがいま、天野さんの遺した作品とその思いを軸にして、同じ気持ちになっていることの共生感がすばらしかった。これだけでこのツアーの意味を十分に感じることができた。                        

 

食事の終わるころ、一行の最年長者として私が締めの挨拶をさせていただいた。

冒頭に述べたような天野さんとの初対面の様子を紹介させていただきながら、今回のADA社の企画のうれしさと、粒よりな特約店のみなさまとの同行を感謝させていただいた。

                                                          (つづく)


>>第2部へ 



                                                                               
  >>  目次  >>