Live Window10 (第二部)

「世界水草レイアウトコンテスト2016」 審査員レポート

                            
ペンギンビレッジ株式会社 代表 尾崎 初(はじめ)


第二部〜

第二部は16時頃より、同じ会場で立食形式のパーティとなりました。開会の挨拶は大岩専務。

山田先生の乾杯の発声に続いて、食事をいただきながらのにぎやかな歓談の場となりました。
 


第二部 大岩専務の挨拶


山田先生の乾杯



ADA社員の方からビールの接待


山田先生と



台湾の黄(フォン)氏と


ベトナムの方と



常連の小野さんと2年ぶり


専門学校の学生さんからの質問 


途中、トップ7のインタビューや、プレゼント抽選会が行われ、オークションでは驚くような高値で競り落とされるADAグッズにどよめいたりと、
あっという間に時間が過ぎていきました。


第二部の〆の挨拶は、激励の言葉として私に割りあてられていました。

私はアルコールもいただいて、だいぶリラックスしていたんでしょうか?
あとから写真を見せられたら、上着の前を開き、終始腰に手をあててのラフな雰囲気。

もう少しかしこまっていたつもりだったので、ちょっと驚きました。
 


尾崎の閉会挨拶


正面天野社長、左は娘さんのさゆりさん


私の挨拶の要旨は次のようなものでした。
 

@

天野さんが亡くなって1年、天野さんの遺志を継いで、ADA社員をはじめとして世界のアマノファンがこのように内容の濃いコンテストの実行に至ったことへの祝辞。
 

A

特にこの道を切り開いた天野さんが偉大であったことは言うまでもないが、そうであればあるほど、その後を継承していくことが難しいことも世間に周知の事実で、ADAは1年をかけて、その継承への一歩を踏み出した。世界のファンが一体となって、さらなる発展の道を歩み始めたADAとネイチャーアクアリウムを支えていきたい。
 

B

コンテストの内容に関しては、そのレベルが非常に高まっていることは疑いない。
思えばコンテストがはじまってのこの16年の間、私たちはレベルの向上に向けてまっしぐらに走ってきた。

そしてそれは見事に成果を上げたと思うが、初心に立ち返ってみれば、現状の作品がかなり難解なものになっているおもむきがある。一般の人に対してもう少しわかりやすいレイアウトが必要だし、またレイアウトの良し悪しをわかりやすく説明することも大切だ。

たとえば「ジュニアレイアウト」といったように、子どもたちにレイアウトをさせたらどうなるかとか、専用のコンテストを行なうとか、といったことから、シンプルでわかりやすい、あらたなレイアウトの角度が開けるかもしれない。
 

C

ともかく今日は天野さんがどこからか見ている気がする。あの豪快な顔で、おい、そこはすこし違うんじゃないか? と、いつものように苦言を呈しながらも、結局人懐っこい笑顔を隠しきれずに、うん、よくやってくれたナア、と社員みんなを褒めているにちがいない。と申し上げて、頑張ってきた天野新社長とADA社員の方々に拍手をいただきたい、と呼びかけた。満場の方々から盛大な拍手をいただき、〆の言葉とさせていただきました。




最後は恒例の「上を向いて歩こう」の大合唱で、フィナーレとなりました。


「上を向いて歩こう」壇上でのダンス


「上を向いて歩こう」会場を押し包む大合唱でした






2日目

参加されたみなさんは、数台のバスに分乗してまず天野宅へ順番に訪問。4m水槽と、それに劣らず天野さんが力を込めて造りあげた庭を見学。


それからADA本社見学とバーベキューパーティという流れでした。

バーベキューは本社駐車場に大きなテントを幾張りも張っての大規模なパーティです。

ADA社員のみなさんが総出で、地元の新鮮な食材を中心に用意し、名物の粕汁を作ったり、焼き鳥を焼いたり、ビールを配ったりと、いつものことながら、細かいところまで手を抜かない天野さんの手法が徹底されたおもてなしでした。

私たちはみなさんの後に続いて天野宅を訪問。天野さんの仏前にお線香をあげさせていただきました。


それから天野夫人、娘のさゆりさんと私の家内をまじえて、あらためてしんみりと天野さんの思い出話をしている時、庭先の椎の木から縁先に落ちたどんぐりが1個、室内に跳ね返って、昨夜からわたしたちのお世話をしてくれている社員の相模さんの肩にあたったのです。

驚くとともに、妙に感心してしまいました。この部屋、この場所で、何度も天野さんと語り合いましたが、いまは私たちの語り合いに天野さんが参加したような、すばらしい庭と素晴らしい4m水槽の前での心に残るひと時でした。


天野宅にて。4m水槽の正面。
左から天野さゆりさん、尾崎、天野社長。
撮影 相模さん

それからADA本社で、レイアウト見学と、この秋以降売り出される新製品の説明を受けました。

特に新製品では「ネイチャーアクアリウム」に併行する新たなセカンドブランドのテーマがはっきりしていて期待大。

あらたなファン層が開拓できそうで、販売店としても、ADAファンとしても楽しみなところです。

また特筆すれば、この部分は天野さんが手がけたわけではない新たな領域。大岩専務をはじめとした遺されたスタッフによる開発で、天野さんの継承・発展の確かな手ごたえを実感できる部分です。

今秋以降、発売される予定です。


ADA本社ギャラリー









バーベキューでおなかがいっぱいになったところで記念撮影。

川を挟んでのこちら岸と本社2階の長大なテラスにずらっと参加者が並んで、対岸からの撮影です。
 

この方式の撮影をしたのは何年前だったでしょうか? 
天野さんがこのテラスから大きな大きな声で指示をして、対岸で天野さん愛用の大判カメラを構えた撮影係の社員が右往左往したのが昨日のことのように思い起こされました。

元気だった天野さん。ほんとうに惜しい人をなくしました。


本社前、こちら岸にもズラッと並ぶ

最後は本社玄関前で天野社長の挨拶。

天野さんが亡くなったショックとその後の1年余の新社長としての日々。個人的にお話ししても、ことばに尽くせないほどの苦労や痛み、プレッシャーがあった様子。その分、参加してくださったみなさまへの感謝がことばの端々に感じられたとともに、この2日間を大きな成功に導いた自信と喜びもにじむ印象深い挨拶でした。
 


天野社長のお礼のことば


参加者はこの奥10m以上にわたる大人数です。




作品解説 …… 私が受け持った作品解説、及び批評の概要

1、ワールドランク21位 タイトル「時のうつろい」

私に割り当てられた最初の作品解説は、私がベストアクアリウムに選んだワールドランク21位の「時のうつろい」 という作品でした。
 

これは私のベストアクアリウムです、と隣の山田先生に囁くと、ああ、この解説は難しいですね、と返された。

確かにそうで、私の解説もわかりにくかったと、あとで会場にいた家内に言われてしまった。

この作品は中央から右側の流木の群れが、左右から大きくへし曲がり、弧を描いて、右上方に白く丸い空間を抜いている。一見して不条理でありそうもない情景に思え、自然感ゼロ、という意見があるかもしれない。 

しかし昨今の私たちは、神戸の地震、三陸の地震と大津波というように、自然というものが、必ずしも条理にかなった美しいものであったり、 


穏やかなものであるとは限らず、時として思いもよらない力を発揮して、私たちの日常性を破壊する事実を目の当たりにしてきた。

こうした体験から、私たちの自然感も見直しを迫られざるを得なかったように思う。   
                             

まるで強力な重力によって押し曲げられたような空間。流木は弧を描くほどに湾曲し、その下には砕かれた無数の石が、地面に縛りつけられたように平たく散り敷きつめられている。
 

不条理なほどの強い力の通った痕が、曲がった流木と敷き詰められた石によって巧みに表現され、かつ、左上方にはもうひとつの力の通った痕がみえ、画面全体が二重、三重に不条理な力の横溢した痕に満ち、その徹底した表現力は素晴らしい。


ありそうもない情景がこれだけ徹底して描かれることによって、それは私たちのこれまでの自然感を逆説的に問い直すかのようだ。そう、不条理であるがゆえに強いリアリティとなって私たちに迫ってくる。 それは自然への原生的な畏怖の気持ちをよびさます。

しかし作品のテーマは、たぶんそうした不条理でも畏怖でもない。この不条理のあとにも、モスは活着し、水草が芽生え、小魚が泳ぎ始めている。不条理な力の痕を静かに蔽う生きものの日常性の復活こそ、新たな自然としてのスタートに違いない。
 

中央右の白い空間は、それ自体としては流行の手法でオリジナリティは少ないが、ただ強い力の通った痕に見えるこの白い空間には、同時に、生きものの営みを通した再生と希望への作者の思いが込められているようだ。

そうした意味で、この作品は表現力だけでなく、思索的にも優れた作品として、ベストアクアリウムに選んだ次第です。
 


2、 ワールドランク4位 タイトル「光陰」

比較的小さな石を綿密に組み上げて、120pという水槽に驚くほどワイドな情景を表現した力作。但し、石組みだけなら数キロにも及ぶ石の原野を雄大に表現できているようでいて、いくつかの流木の使い方がそれを阻害するように、一種遠近感の不明な情景になっているところが惜しい。流木の多くを取り去った方がよいのではないか。


しかしこの作品のポイントは、やはり中央の白い光だろう。まずこの印象的な光の正体が不明なことが、レイアウト全体に溶解されない違和感のような影響を及ぼしている。    

超音波を使用して水の中に霧を演出する手法や、水槽の下から光をあてる工夫を聞いてはいたが、実際は会場での作者のメイキングビデオで、あらかじめ水槽の底に設置した数枚の鏡による演出であることが明らかにされた。



その設置の工夫や苦労がビデオで明るく紹介され、私自身を含め、会場が感心してどよめいたが、作者自身が言うように、レイアウト素材とは直接関係ない器具を使用した人工的な工夫は、できるだけ控えるよう勧めているのがコンテストの実際だ。無条件となれば、きっといまの技術万能の世界ではきりがないほど、「ネイチャー」から離れる公算が大きい。


レイアウトの最大のポイントは、石の原野に見える中央に深く落ち込んだ峡谷のような亀裂の見事さだ。レイアウトの中央付近に川や谷を作る手法は多いが、これはそうした手法の中でもっとも進化して洗練された仕上がりになっている。それは白い光によっては大瀑布にもみえるが、逆に言えば光がないとこれだけ印象的な亀裂に見えないかもしれず、それがその光の正体と相まって二律背反的な課題になっている。    


また副次的には、画面最上部にミリオフィラムの群落があるが、ミリオフィラムの赤は妥協のない即物的な赤で、他と連携しがたく、レイアウトのなかで使いにくいが、これほどの石の重量感の中で映えるということをはじめて見た思い。  

ただ作者が結実させた石の重厚な表現に対しては、それでもまだ軽い印象を否めない。きっと作者にはミリオフィラムをすべて取り去ったレイアウトも選択の中にあったに違いないが、最上部中央に開いた空間は、おそらく峡谷の白い光に対応しての必要な光で、欠かせなかったのだろう。ここにもいまひとつの課題があったように思う。


3、 ワールドランク 2位 タイトル「夢のような世界」 

流木の根状態のものの綿密な組み方と、その全体を宙に浮かせたダイナミックな構図で、インパクトの強い作品になっている。作者の高い力量は疑いない。

ただ、宙に浮いた流木の根状の自然感の由来はどういったものだろうか?


たとえば、元来、根は土砂に埋もれていた。それがなんらかの理由で土砂がさらわれ、結果として宙に浮き、モスが活着した、等と想像することはできる。だがそれならば、失われた土砂の痕跡が作品中に示されねばならない。
石組みで、親石に対してそれを支える副石が重要であるように、造形の中心テーマに対して、それを支える伏線が最低1個は用意されないと、根の造形は孤立し、文字通り浮いたものとなり、造形のための造形、表現のための表現という批評を受けるおそれがある。


 

これはもちろんリアリティや自然感の喪失として、現状の審査基準の上ではかなりの減点になるはずだ。たとえば、右の根の下に砂の堆積が見えるように、作品の隅に底床の乱れを作るだけでも、それなりの効果を出せるかもしれない。


  


※なおグランプリ作品については、今回は解説の担当ではなかったため、割愛させていただきます。

すばらしい作品に間違いはないのですが、テイストとしては、2014年度グランプリ作品に類似しているのが評価の分かれ目だと思います。    



(文中写真は会場で手撮りしたものです。見にくいことをお詫びします。 特に作品については、コンテスト作品集をご覧ください)





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