DISCUS + WATERPLANTS LAYOUT

                                                                  
ペンギンビレッジ  尾崎 初




 ディスカス飼育を水草レイアウトで成功させるコツについて、ディスカスの水草レイアウトが

本格的に展開されはじめた1988年、アクアライフ誌に標記記事が掲載されました。すでに25年も前ですが、かえってディスカスレイアウトの原点について直截的であると思われます。以下、多少の加筆・修正をしながら、要点をまとめていってみましょう。

 

 

 1. はじめにいえること ――
     水草レイアウト水槽の完成度とディスカスレイアウト 

現在(注。1988年時点)、ラスボラやカラシンなどの小型魚を泳がせた水草水槽の完成度は、技術的にほぼ100%に近いのではないかと思われます。ディスカスの場合も、それを水草レイアウトで泳がせる限り、同じような知識や経験が土台となることはもちろんです。しかし対象が「ディスカス」という特別な魚であるため、その性質に合わせたプラスαの部分がありそうです。


他方、ディスカスそのものの飼育は、もう長い間、水槽に水草はもちろん、砂も敷かない、いわゆるベアータンク方式が主流となっています。だからここで解説するディスカス・レイアウトは、それらと多少なりとも発想を異にしている部分があるでしょう。


そこで双方の意味を含めて、ディスカス・レイアウト水槽制作の一般的な注意について記してみたいと思います。

なお、話をより具体的にするために、写真の水槽を一例として、随時引用することとします。




撮影/尾崎 初



 

2、 全体のバランスを考えること

写真の水槽は、アルミブロンズ枠製の200×42.5×50pHのガラス水槽です。


実際の制作にあたって、この水槽のオーナーであるY氏と共同で、まずレイアウトの図面を作ってみました。魚はあらかじめLサイズのターコイズ・ディスカスと希望が決められています。

 


 


大雑把なレイアウト図面の中で、魚の収容尾数から決めていく。この大きさの水槽(実質水量360L)をこのレイアウトでつくるとすると、バランスのとれる尾数はLサイズで14〜15尾だろう、と。


というのも、ディスカスはよく知られているように、比較的闘争性の強い魚ですが、かといって集団飼育ができないほどでもありません。実はここにディスカス飼育の楽しさとむずかしさの大きな部分があるのです。たとえば闘争に負けて落後していく個体を作らないように、うまくバランスを調整できる、飼育者の技術や経験が大切な要素となってくるのですが、これはディスカスが本来持っているテリトリー意識が単位水域あたりの収容尾数に大きく関係しているため、このテリトリー意識を逆に利用し、魚相互の勢力バランスを管理してやるということです。これはディスカスに特有な性質といってもよく、ディスカス飼育の醍醐味の一つです。


水草レイアウト水槽での収容尾数を決めるには、勢力のバランスを考えるのと同時に、レイアウトそのものやろ過装置の能力、さらに水かえといったファクターをも含めた全体的なバランスを調整する視野が必要です。たとえば90p水量150Lのベアータンクでのおおよその収容尾数がLサイズディスカスで10尾前後としても、レイアウト水槽でのそれは、水草や他の状況によって一概には言えなくなるのです。


したがってバランスの調整に自信がなければ、まずおおよそのレイアウト図面をつくり、信頼できるショップに相談することをお奨めします。ただ、少なくともこうしたバランスを調整する配慮は、ディスカス・レイアウト水槽を最終的に成功させる最も大切な要因であるとともに、変化していく要因なので、常に忘れずにいたいものです。




3.ろ過装置の選定

次に水槽の大きさと魚の収容尾数に合わせて、ろ過装置を選定します。


ろ過装置にはいろいろなタイプがありますが、私はことレイアウト水槽に関しては、パワーフィルターといわれる外部式の密閉ろ過装置がもっとも適していると思います。もちろん収容する魚がディスカスであっても、同じレイアウト水槽として同様に考えることができます。他にも、500L以上の大型水槽の場合は、いわゆるオーバフロー方式も有効ですが、上部フィルターや底面フィルターはそれぞれ欠点があり、私は採用していません。


ともあれ、ここでは一般的なパワーフィルターを例にとってみましょう。


私の経験では、90×45×45pH水槽(水量約150L)の場合、エーハイムパワーフィルターなら2017(吐水量14L/m、最大フィルター容量約5.5L)(旧型。現在はE2217)、120×45×45pH水槽(約200L)で2017(現在はE2217)+2213程度が各々標準的に必要な能力であると思います。
※ADAのスーパージェットフィルターの場合、ES-600EXは(5.5L/m、約9L)、ES-600は(5.5L/m、約6L)。下記写真参照。


一般に水草水槽の場合は、メーカー指定の機種よりワンランク下のもので間に合う場合が多い。これはとりもなおさずフィルターの能力を水草の浄化能力が補うからですが、ことディスカス水槽に関しては、魚そのものがカージナルなどに比べて大型であることや、比較的大量に給餌することを考えれば、メーカーが水量に対して指定している機種を最低限のラインにするのが望ましく、ワンランク上の機種を標準としてもいい。


写真の水槽はエーハイム2034一基と、予備として2017一基をセットしてありますが、この程度の能力があればろ過装置としてかなり安心できるでしょう。


また、ロザイについてはそれほど神経質になる必要はないと思います。エーハイムの場合、本体に備わっている活性炭だけでも、最初の半年間くらいは十分生物ロザイとして機能します。(略)



   
 「適したろ過装置はパワーフィルター」

 

  ● 60×30×36pH水槽(約55L)

   

エーハイム

E-2213

ADA  スーパージェットフィルター

ES-600



    ● 90×45×45pH水槽(約150L) 

エーハイム

E-2217

ADA  スーパージェットフィルター

ES-600EX



    ● 120×45×45pH水槽(約150L) 

エーハイム
 
E-2217   
 +    E2213

ADA  スーパージェットフィルター

ES-600   
+  ES-600
 

  

 

4.エアーレイションの必要性

この水槽は、パワーフィルター以外にもブリラントフィルターを使ってエアーレイションを常時行なっています(それにはちょっと訳があります。後述)。さらに夜間は、それとは別にエアーポンプでタイマーによるエアーレイションを施しています。


夜間のエアーレイションは、水草水槽のディスカスにとって特に重要です。昼間と違い、夜間、水草が水中の酸素を吸収し、二酸化炭素を放出する呼吸作用は、調子がいい水草水槽ほど旺盛です。それは魚が必要とする水中の溶存酸素を容易に奪い取って、ややエラの弱いディスカスを酸欠に追いやることになります。


仮に一晩エアーレイションが止まるとすると、この写真のディスカスの1/4くらいがその日のうちに死ぬでしょう。しかも残りの2/3くらいはエラ機能に障害を受け、1週間くらいの間に徐々に死んでいく。つまりごく一部のディスカスしか助からないほど、夜間の水草の呼吸作用は想像以上なのです。魚の安全を思えば、必ず二重のエアーレイション* をしてやりたい。


一口メモ 水草水槽のディスカスには夜間のエアレーションが必須

* 二重のエアレーションは、夜間のエアーレイションをメインに、もしその故障の時のために、 
     パワーフィルターの吐出口を水面に向けて常時波だたせ、水中に酸素が取りこまれるように
     することが一般的。



 

5. CO2を添加する2つの意味

水草水槽にはCO2の添加が不可欠です。特にセット後2週間ほどは、1日1回は忘れず添加したい。しかしどの水草にも必ずCO2が必要という訳ではありません。CO2の添加がなくても、育つ水草はたくさんあります。むしろセットしたての水槽では、CO2を大量に必要とする水草を育成するためというより、水草一般の成長を促すことで、コケや藻の発生を抑える意味で使うことがひとつの大切な考え方です。


写真の水槽では高圧の大型CO2ボンベにエーハイムのパーツであるディフューザーを接続し、CO2ガスを直接水槽内に添加してあります。ここにある水草のためだけなら、通常の拡散筒を使えば十分ですが、水草がよく繁茂する水槽ではどうしてもPHが7.5前後と高めになってしまう。


CO2とPHの関係は、水草水槽内でディスカスのブリーディングを試みる際、最も関心のある事柄のひとつとなります。


PH7.5という値は、ターコイズなど改良種の飼育になんら支障はありませんが、PHが高い水槽ではディスカスのブリーディングに失敗しやすいといわれているからです。そのためCO2の添加によってPHを下げることで、ディスカスの水草水槽内でのブリーディングが大きな可能性として考えられてきます。


そこでCO2を添加すると、どのくらいPHが下がるのか、これは前述のY氏の希望でもあるので、1つの実験の意味を込めて、CO2の直接添加を実行しています。その結果、この水槽の場合、溶存CO2量が30mg/Lを超えるとPHは7.0をやや切るまで下がります。20mg/L前後では7.5程度です。ただし30mg/Lを超えるCO2ガスが細かい気泡となって水中に放出されると、ディスカスがその部分を明らかに嫌がり避けて泳いでしまう様子が見られます(このため、この水槽では先述したようにエアーリフト式のブリラントフィルターを併用した特殊な例となっています)。


ここではブリーディングのためにCO2 を添加する問題についてこれ以上立ち入れませんが、ただ現在までのところPH7.5前後の弱アルカリ性の水中で、少なくも改良種のディスカスは十分に産卵し、ふ化もし、育仔もうまくやってのけます。したがってPHを下げるためにCO2を強力に添加したり、他の薬品類を無理して使うのは、こと水草水槽に限ってはすすめていません。


なお光量と底砂については、通常水草水槽をセッティングするのと同様で構わず、ディスカスを泳がせるからといって特別に注意する点はありません。したがって水草栽培に関する記事等を参考にしていただきたい。



一口メモ CO2は水草の光合成を促して、浄化能力を高める。

なお、底床に大磯砂を使うとPHが上がる、という説がありますが、ペンギンビレッジが25年来使用・販売している大磯砂の場合、実験してもそういう結果が得られることはありませんでした。


大磯砂にも種類はあると思いますが、一方では水道水の浄水場における消毒過程、またマンション等の貯水タンクでの影響があるとも思われます。




6. 水草と水温の関係

ディスカスの水槽で使う水草というと、まずその高水温に耐えるかどうかが問題にされます。これはディスカスの場合、30℃前後の高水温下で飼う方が多いからです。


したがって、よく“高温に耐えられる水草はどれですか”と聞かれることがあります。もちろんその質問に対して“アヌビアスとかハイグロフィラです”と答えることができますが、もっと正確に言えば、ほとんどの水草が30℃ぐらいまでなら適応できるのです。


ある水草が水温30℃で枯れたり、弱ったりするのは、その水草が本来30℃に適応できないのではなく、水草そのもの(個体)の状態がもともと悪かったせいか、あるいは高水温下でも適応できるだけの他の条件が整っていなかったかのどちらかによることが多い。たとえばマヤカ・バンデルリィは、確かに低水温が理想だが、CO2を添加して光量をやや弱くしてやれば水温30℃でもなかなか美しい姿を見せ、繁殖もします。


一般的な水草は30℃までは十分に耐えます。したがって夏の特に暑い日なら、蛍光灯の光をやや抑えたり、水槽のフタを開けたり、扇風機で直接風を送ったりすることも必要かもしれないが、わざわざ水槽にクーラーを設置しなくても多くの場合、夏を越させるのはいわれているほど難しくはない。(注。25年前とこの数年間と、もっとも変わったことのひとつが夏の暑さでしょうか。昨今の猛暑の夏は、水温が30℃を越える日が珍しくない。ファンやクーラー等なんらかの猛暑対策は必要になっています)。

 

このように好条件下ではほとんどの水草が30℃くらいまで適応できるとすれば、水槽内の水温を仮に28℃に設定できれば、この2℃の差は、水草の育成条件として思った以上のプラスになることが実際に行なうとわかります。そしてより多くの種類の水草を導入することもできます。しかも28℃でもディスカスは十分にエサを食べて成長し、ブリーディングにさえこれといった支障は見られません。


そう考えれば、ディスカスのレイアウト水槽に最も適した水温は、28℃程度ではないかと思われます。もちろん30℃という高水温下でのハイレベルな水草育成もまた違った魅力があるでしょうし、違ったデータが提供されることでしょう。

              ←略

 (注。30℃を越える高水温下でのディスカス飼育という方法は、ブリーディングの効率を高めるプロのブリーダーのやり方で、必ずしも一般の方の楽しみ方ではないと思います。当時と違い、現在のディスカス飼育は他の熱帯魚と同じ25℃前後での飼育が一般的と思います)。

 

いずれにしろ多くの人の心配をよそに、こと水草に関しては、大体どの種類を使っても平気なのです。いいかえれば、ディスカス水槽にだけ使える特別な水草というものは存在しません。高水温下の水草栽培を気にかけるよりは、むしろ状態のいい水草(できれば水中葉)を手に入れること、基本的な栽培条件を守ること、そして自分の水槽とディスカスに見合ったレイアウトを考えてやること、などの方がよほど大切と思われます。



一口メモ 
ディスカス特有の高温飼育は、ブリーディングの効果を高めるプロの方法。
アクアリストとしては他の熱帯魚と同様25℃飼育が一般的。




7.    ディスカス水槽でのレイアウト

水草そのものは100種類以上が使えます。しかしディスカスは比較的大きな魚で、しかも若干の闘争性があり、大量に給餌するので、これらの点がレイアウトをするうえで多少の制約になるかもしれません。そこでレイアウトのポイントをいくつかあげてみましょう。


@  遊泳空間をつくること

写真のレイアウトのように大きな舞台をつくったり、逆に小道をたくさんつくってもいい。ただ細かい水草をあまり多く植えすぎると、ディスカ スのヒレが切れてしまうことがあるので注意する。キズにはまずならないが、ノコギリの刃のようにきれたヒレを見るのは痛々しい感じです。


A  弱い個体のための隠れ場所を故意につくらないこと

これについては賛否両論あるでしょうが、多くの場合、隠れ場所や逃げ場所をつくらないほうが力の強弱のバランスをとりやすい。


B  給餌場付近(エサを落とすあたり)の水草(主に前景水草)は条件に合うものを選ぶこと。

この点がレイアウトにおいて最も大切かもしれません。なぜならば給餌場付近の水草というのは、まずディスカスの摂餌の邪魔になり、しかも大量のエサでよごれやすく、残餌が水草の根元にたまって腐敗しやすいなどの悪条件が重なるからです。したがってこの付近には悪条件に耐えられる水草を選んで植えるか、あるいは餌を食べやすく、またそうじをラクにできるようにまったく水草を植えないかのどちらかになります。後者の方法も効果的でしょうが、水草の本当の力をまだ軽視しているようなやり方に思えます。


要するに結論からいえば、前景(つまり給餌場付近)水草こそビッシリと植えたいのです。そこがディスカスの摂餌場であるがために大量のエサで汚れ、残餌が腐敗しやすいからこそ強い水草をビッシリと植えるべきです。


 このような悪条件だからこそ、水草の力(浄化作用=処理能力)が発揮され、水槽全体のバランスを知るメルクマール(指標)となるのです。


たとえば写真の水槽では給餌場付近(ガラス前面上部3か所にエサ入れハットを設置している)に前景水草も兼ね、ピグミーチェーン・サジタリア(*)を使っています。これにはやや強めの光を与えてやると、草丈が2〜3cmのロゼット状の姿にとどまるので、前景水草として都合がいい。しかしそれとて2〜3pも草丈があるので、エサが落ちてくればその根元にたまり、腐敗してくる。腐敗してくれば亜硝酸濃度やアンモニアが上昇し、PHも下がって、水槽は一発で全滅するに違いない――との心配は、大量給餌を前提としたディスカス飼育であれば当然のことです。


ところが順調な水草水槽では、この点についてまず心配はないといえます。逆に残って腐敗しているはずのエサ、あるいは魚のフンやゴミを水かえの時に探しても、その形跡すらないことが多いのです。なぜでしょうか?


まったく不思議なことで、特に水草水槽を持たない方には信じがたいかもしれませんが、実はこれこそが水草の本来持ちえる力なのです。水草は一見柔和で弱々しく見えますが(もちろん水草に付随する各種バクテリア等を使って有害物質をある程度処理する力を持つことはご存知でしょうが)、彼らがいったん自分たちの生育できる好環境を得ると、他の野生生物の例にもれず、本来のどん欲なまでの生命力を発揮するのです。この驚異の一端として、前述の「エアーレイション」の項では、夜間の水草たちの呼吸活動のすごさを紹介しました。ともかく、その呼吸作用においても、残餌の処理能力においても、私たちの予想以上の生命活動であることは間違いないのです。


この生命活動の驚異の背後には、何億年もの間、少しずつ進化しながら生き抜いてきた歴史があるはずです。また水槽内が、現地の生息環境より数段優れているからでもあるでしょう。つまり原生地の自然環境そのものは、たとえば病虫害の危険、各種ガスや土壌成分の溶出による脅威、さらに水位や水温の変動、水草自体の生存競争など様々な条件の強いられる中にあり、決して水草が育つための最適な条件ばかりとはいえないからです。その意味で水槽という人工的な環境は、可能な限り彼らの生長にとっての障害を取り去ったユートピアなのだと思います。こうした中で、水草が本来持っていた能力を現地の水草以上に、そして私たちの予想以上に発揮したとしても、不思議なことではないといえるのではないでしょうか。


このようにして、写真のサジタリアたちは自身の根元に落ちたエサの残りや魚のフンを自らの光合成やそれにともなって生活している無数のバクテリア類を駆使し、不断に分解、吸収、処理している。そしてそれは残餌の形跡を残さないほど強力なものであり、大量給餌を前提にしたディスカス飼育の現状では、こうした前景水草はレイアウト水槽全体のバランスを維持する第一の装置といえるでしょう。逆に、そこに何らかの障害が見られれば、全体のバランスのどこかに問題があるか、いずれ問題が起こる前兆としてメルクマール的な意味も持ち合わせています。


こうした役割を果たす水草はピグミーチェーン・サジタリアに限らない。他にもエキノドルス・グリセバキィ、同じくテネルスなどが使えます。

 * これはサジタリア・スプラータやテレス系の交配種かと思われますが、すでにまったく国産化されていて学名不詳。
     「ピグミーチェーン」または「ピグミーチェーン・サジタリア」という名で市販されています。
     (ピグミーチェーン=エキノドルス・テネルスとは  別もの)。


 
@ピグミーチェーン・サジタリア


Aエキノドルス・グリセバキィ




8. 産卵しそうな場所をつくること

ディスカス・レイアウト水槽で最も楽しいことのひとつに、彼らがペア行動をとり、産卵する光景を見ることが挙げられます。ペア行動をとりはじめれば、彼らはソワソワと水草の葉やガラス面など産卵しやすい場所を物色しはじめる。そして産卵、ふ化、さらに体側に稚魚を引き連れた有名な育仔行動。やや神経質といわれているターコイズまでが、十分にレイアウト水槽の中で産卵、ふ化、育仔をします。


ただし、レイアウト水槽でのブリーディングは、それ自体を目的とするならベアータンクに比べ効率が悪いといえます。たとえば親の体につき始めた稚魚は、親が驚いたりすると容易に水草や流木の彼方にはじきとばされ、迷子になってしまう。親魚は必死に子を引き戻そうと狭い水草の間にまで入って行くが、草の隅にいる1尾、2尾を口に吸い込んでとらえると、その間体側について従ってきた他の何尾かがまた別の水草の茂みに紛れてしまったりする。


このように、レイアウト水槽内でのブリーディングも不可能ではないが、あえてそれを目的とするものではないでしょう。あくまでバランスのとれたレイアウト水槽での、ディスカスの自然な行為として考えたい。それでも、あるいはそれだからこそ、ディスカスの産卵行動は私たちにとって魅力的で、ここにレイアウトを決める段階であらかじめ彼らの産卵場所を計画する、ひそかな期待があるのです。


そこでレイアウトのどこかに、卵を産みつけそうな流木(70度くらいのやや急な角度をもったもの)を1〜2本、それとなく水槽内に配置する。その周囲の水草には草丈の低いものを選ぶか、あるいは比較的トリミングを頻繁にし、産卵行動の邪魔にならないような配慮をする。もちろん産卵行動をとりはじめたペアが、あらかじめ配置した流木に産んでくれるとは限らない。それが気に入らなければ、垂直なガラス面や、あるいは宙返りをするほど窮屈そうにして水草の葉裏に産みつけることもある。しかし思った以上に確率高く、私たちの期待する流木面に産んでくれるものなのです。


 
水草レイアウト水槽でのコバルトターコイズ・ディスカスの育仔(1988年5月)



9. エサについて

ディスカスの代表的なエサとしては、@ハンバーグなどの冷凍エサ Aアカムシ、イトミミズなどの生き餌、またはその冷凍エサ Bフレークフードなどの乾燥飼料の3つに大別されます。


結論から言えば、ハンバーグの場合はやや難を感じますが、それ以外のものならどれでもいいといえます。かなり水草の調子がよくても、市販のハンバーグだけは常時与えるには脂肪分か、粘結剤かが目立つので、残餌の処理を行わなければならなくなる。それでも水草水槽の場合はベアータンクのように残ったエサを完全には除去できないので、結局は残餌分が葉の表面を覆って水草を窒息させやすい。したがっておやつ程度に与えるのがいいでしょう。


一口メモ 
ディスカスは比較的寄生虫に弱く、寄生虫によるトラブルを無視できない。したがって生き餌の場合はできるだけ洗浄等をして、寄生虫が水槽に入らないようにする。

冷凍アカムシはどんな生い立ちのディスカス(ブリーディング、野生の別)でも好むエサですが、殺菌処理をしてある市販品をさらに与える直前に洗浄することをお奨めしたい。



10. 少なくて済む換水頻度

ディスカス・レイアウト水槽には、ベアータンクでの飼育に比べて水かえの頻度が少なくて済むという特徴もあります。おおむね週に一度、4分の1程度の量で十分です。これはとりもなおさず、水草を中心として全体的なバランスがとれていることが後ろ盾になっているからです。レイアウト水槽での水かえは、そうした意味で他のケースとは違った考え方になっています。


たとえば90p水槽に1匹の大ナマズ(たとえばレッドテール・キャット)を飼っていたとする。底砂と、隠れ家として丸い石や流木、ろ過装置をセットして、ほとんどこれだけで1か月経過したとする。今までの経験からすれば、そのナマズは動きが悪くなったり、食欲がおちたり、ひどい時には粘膜が白くただれてくるでしょう。この時、多分PHが極端に低下したり、アンモニア系(硝酸塩等)が蓄積したりしているはずです。つまり水かえなり、ろ過槽の洗浄をしなければならない時期なのです。そして水かえを実行し水槽内の毒素を除去すれば、すっかり新しくなったかのように再生する。この場合の水かえは、はっきりとした必要性とその効果を考えての作業となります。


しかし水草水槽にとっての水かえは、こうした効果や必要性が明確でない場合がほとんどです。逆に言えば、調子のよい水草水槽では1か月程度ならまず水かえの必要がありません。PHも亜硝酸も硝酸塩も、魚の状態を含め、まずこれといった悪化や変化は見られないのです。では、永久に水かえが必要ないのでしょうか? もちろんそうではありません。


水草水槽の水かえは、必要があればもちろん、必要がなくても実行します。水かえは、水槽内の魚、その代謝物、そしてバクテリア、水草、さらに光などでキープされている生態系のバランスの一環として考えるからです。川や池に雨が降るように、自然サイクルのミニチュアを再現すると考えれば、水かえの周期や意味も理解できるでしょう。


このようにして、一般のレイアウト水槽では平均して2週間に1度、4分の1程度、ディスカスのレイアウト水槽では週に1度4分の1の水かえをひとつの目安としてすすめています。ただし、諸々の事情などで仮に1か月手を入れられなくても融通がきく、水槽のバランスをつくることが前提です。逆に言えば、忙しければ1か月手を入れなくても大丈夫。もともと水草水槽の制作とは、ディスカスのレイアウト水槽も含めそういうものと考えています。


ドイツの専門誌『DISKUS 1992』に掲載されたペンギンビレッジの店内水槽(1992年)

   (前景草はエキノドルス・グリセバキィ)



 産卵行動中のディスカスのペア

    2014年10月店内水槽(900×450×450H)

    (前景草はグロッソスティグマ)

レオパードターコイズ・ディスカスの幼魚

 2014年10月店内水槽(600×300×450H)